「オレの事だけ考えて欲しいんだろ?」
微睡みの中話しかけてくる自分と同じ容姿の少年。
ああ、いつもの夢だ。
刻は夢の中で意識が覚醒していくおかしな感覚を黙って受け入れる。
もう何度も見てきたおかしな夢。
「また…オマエ…カヨ…」
うんざりした声で話しかけると少年は小さな笑みを返す。
同じ容姿。でも今の刻と同じではない。
少し前の自分。
一番嫌いな、寧々音を失ったばかりの頃の自分だ。
「……ホラ…来いヨ…」
欲情に濡れた声で、「トキ」は同じ名前を呼んだ。
「オレだけを見てもらいたいんだろ?」
ぞくりとするような低い声が、耳朶をくすぐる。
嫌悪感が刻の肌を粟立たせた。
「いい方法を教えてやるからサ…」
―― そんな事を望んでなんかいない
跳ね飛ばしたい相手を跳ね飛ばせず、思うように動かない身体。
肌を舐め始めたトキの舌に重い身体が反応していく。
浅ましく下半身が脈打つのを刻は感じ取った。
ためらいなく取り出して、熱を帯び始めた下半身を口に含まれる。
「うっ…」
堪えきれずにトキの頭を押さえつけた。
けれどトキは根元を強く握り締めて刻の射精を止めてしまう。
「まだイっちゃ駄目じゃん。もっと我慢しなきゃ。
てっとり早く愛される方法、教えて欲しいんでしょ?」
嘲笑を含んだ微笑を投げかけて、トキが身体を起こした。
「こうやって…ネ?」
屹立した刻のものを自分の臀部に宛がって、体重を落としていく。
「くっ…」
根元まで熱いものに呑み込まれていく感覚が夢とは思えないほどリアルで、
刻は小さく声を漏らした。
仰向けにベッドに横たわって、トキを眺める。
恍惚とした表情でトキが見下ろしてくる。
慣れた様子で熱を貪るように腰を揺らしていく。
目の前で見せつけられる自分自身の浅ましい姿に顔を背けたくなる。
トキの声が歓喜によがり、細い腕が背中にしがみ付く。
「ねっ…わかる?こうしながら…キスするんだヨ?…」
心の抵抗に身体が追い付かず、
歯列を割ってすぐに絡んでくる舌を刻は黙って受け入れた。
吸い付くようなキスは激しくて、まるで獣のようだ。
本当に欲しているものがなんなのか刻にはわかりきっている。
「も…もっと強く抱いて……」
縋り付くようにトキが懇願する。
渇望だ。
ただ、自分の存在を確かめたい欲求。
必要としてくれる誰かを曖昧に探す。
そのための方法を過去の自分に教えられる夢なんて。
強くなる快感と同時に吐き気が高まってくる。
ふいに刻の指がトキの頬をなぞった。
微かに、寂しげに、トキが微笑んだ気がした。
fin