「心の扉」
「・・・色気のかけらもねえな。」
ハシゴの下から、上を見上げた眉毛が冷静に呟いた。
「チョッ・・・何見てんですかぁっ!!へんた・・いっ!?」
慌てて短いスカートの後ろ側を手で押さえた瞬間、
私の体はハシゴの上でバランスを崩して傾いた。
「きゃぁぁぁ?!」
体制をなんとか立て直そうと体に力を加えてみたけれど、
体重を乗せた方向にグラグラとハシゴが揺れて、
私は反射的に落ちないよう必死でハシゴを掴んだ。
数回左右に大きく傾いて冷や冷やしながらも
なんとかバランスを立て直してハシゴの天辺で座り込む私に、
「あーホント、なさけねえ。そのパンツ。小学生かよ。」
とダメ押しのヒトコトが投げかけられる。
「ど・・・っどんなパンツ履こうが、イギリスさんには関係ないじゃないっ!」
ううもっと言ってやりたいことがあるんだけど上手く言葉が出てこない。
恥ずかしいのと悔しいのとで、自然にほっぺが膨らんだ。
どうせ子供っぽいですよ。
それにどうせ・・・高級なレースの下着なんて・・・
ちょっとだけ欲しいけど、似合わないもん。
スレンダーで肌が真っ白で、綺麗なレースが似合ってて、
綺麗でお上品な人がいいなら、
そういう人を生徒会に入れればいいじゃない。
この学園には、そういう人が一杯いるんだから・・・。
「この・・・変態眉毛。」
一応聞こえない様に上を向いて、そう小さく呟くのが精一杯。
「ああん?」
それでも自分の悪口に敏感な眉毛の耳には届いてしまったようで、
「てめえ。いい度胸じゃねえか。」
と、下から明らかに不機嫌な顔をして睨み付けて来る。
「はいはい、すみません。なんでもないですよー・・・。」
だって完全に逆切れじゃない。
と思いつつも言って通じる相手じゃないので、一応。
それでも不満気に、私はかたちだけ誤った。
怒らせたらどんな理不尽な仕打ちがまってるんだかわからないのに、
なんでこんなにイライラしてるのか自分でもよくわからないままに。
探せと言われていた資料を手に持って、ゆっくりとハシゴを降りる。
「ったく・・・調子に乗ってると本気で侵略してやるからな!
大体本探すのがトロいんだよ!それに・・・」
いつもと同じ調子でブツブツネチネチが始まった。
いい加減慣れてきてしまった。
でもうんざりしつつも一応反省の態度をとっておかなくちゃ。
それでも、私が床に着くまで
彼の片手がずっとハシゴに添えられて居た事に気づいて、
私はなんだか自然に顔が笑ってしまうのを止められなかった。
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